2016年の漫画23選

年末なので振り返ってみる企画。今年はだんだん新刊購入も電子版にリプレースしていったりしてるし、逆に電子版で過去作品や現行作品の既刊を一気読みしたりもしたんで、あくまで私が今年読んだもの、みたいな感じではあります。あと「連載は追いかけてるけど単行本購入まではしてない」けど注目、ってのもあるし、○個選ぶってのは結構難しいです。あと新作と継続作品の違いってのもあるし(あまりに安定してるとこういうタイミングでは選びづらい)…… 数が中途半端なのは、「これだけは書かねば」と選んだ結果です。あと2つ足せばいい気もするけどそれだけの気力がなかった……

遠藤淑子作品集 ヨシツネ

幻冬舎でのお仕事の収録分。やはり一番いいのは「手紙」だなあ。/他社での未収録作品収録されないかとちょっと期待してたけど残念ながらそれはなし。幻冬舎で不定期で仕事続けるのかどうかはちょっと気になるが、今のところ情報なし。ファンとしては「なごみクラブ」と「ハチ参る」というショート・4コマ形式作品以外のまとまったページ数の作品、描いて欲しいんですけどねえ。

昭和元禄落語心中雲田はるこ

八雲の死、それぞれの過去の受け入れや和解、そして落語業界の再生。密度の濃い最終巻。坊の父親はさすがにちょっとびっくりした。

ふたがしらオノ・ナツメ

思えば長かったなと思うんだけど、道が分かれたようでいて結局互いが必要だったということか。「さらい屋五葉」とのつながり、隠居の件は言われるまで気がつかなかった……

僕のヒーローアカデミア堀越耕平

弱虫少年のヒーローとしての成長物語のみならず、学園ものとしても申し分ない出来。先生世代の激突と決着、そして生徒世代への引き継ぎ。この世界ではずっと続いてきたことなんだ、ていうのも描かれていた。しかしそれはヒーロー側だけではなくヴィラン側も、ってのがすごいわな。

魔王城でおやすみ(熊之股鍵次)

「捕らわれの姫君が快眠のため魔王の城でDIY生活をする」というコンセプトに加え「目的のためには手段を選ばず魔物相手にやりたい放題」で毎回笑わせてもらってる。しかしまあ、よくネタが尽きないなあ。感心。

初恋ゾンビ峰浪りょう

告白しますと最初ちょっと苦手かも?と思ったんですよね。健全な範囲だけどお色気系か……という印象持っちゃったんで。でも人の恋愛助けつつ自分たちの恋愛は複雑な状態から進めないでいる、ていうあたり正統派サンデーラブコメなんだなと。途中から「化けたな」と思いました、はい。

逃げるは恥だが役に立つ海野つなみ

ドラマも大きな話題になったけど、ドラマとは違ったエンディング。でもどっちの結末も納得ではある。単にドラマがヒットしたというだけじゃなくて、いいアレンジの仕方をしてもらえた幸せな映像化だったなと。

これでおわりです。(小坂俊史

モノローグシリーズや同人誌での作風の延長上とも言えるショートストーリー連作。色々な終わりの話、ではあるけども、終わりが新しい始まりだったり、終わると見せかけてループだったりと変化をつけてて面白い。

暗殺教室松井優征

殺せんせーが生徒によって殺されるという結末の意味を考えながらの連載だったんだろうな。寂しいけど希望のエンド。理不尽なこともある世の中でどう生き抜いていくか、必ずしも正面から戦う必要なし、生き抜くことが大事、ってのはジャンプらしくはないかもしれないけど一つの大事な考え方だなあと思う。お疲れさまでした。

味噌汁でカンパイ!(笹乃さい)

連載開始当初これいいなーと思ってたので、集中連載から正式連載(続行)になった時はうれしかったな。いろんな味噌汁を紹介しつつ恋愛(ヒロインの方はあんまり自覚がないんだが)話をゆっくり進めていて好感度高し。

ゴーゴーダイナマイツ(小池定路

母親には自分のことを理解してもらえないと思っている梨子、バレエをやめたことを申し訳なく思っている真乃、いじめられていた過去を引きずるかなえ、母親が帰ってこないのではないかと不安を抱える灰崎……チアリーディングという他の人を応援する立場になる子たちが、実は生きにくさを感じてきた子たちだった、というのがコメディタッチの裏で描かれている。だからこその応援、ということになるんだろうか。さじ加減の難しいテーマかもしれないけど、今後も楽しみ、という感想を2巻発売時に書いていて、連載の方では「文化祭での演技発表」という形でそういったもろもろを昇華したなあというところ。1月発売号で完結ということで、もっとみんなを見ていたかった読者としては残念。まあ描くべきところは十分に描けたんだろうなと思うんで、その意味では読者としても悔いはないんだけども。

BIRDMEN(田辺イエロウ

月1連載だからかアーサー達の処分〜鷹山出奔〜覚醒した4人の行動、と展開早いなーという感じはする。とはいえ、鷹山再登場?でまた新局面、というところで今年の連載分が終わり。まだどうなるか予測がつけにくいな……

パレス・メイヂ(久世番子

「主従の身分違いの恋」として、一旦は帝側が自分の役目を全うするために御園を解雇するという展開をしてからがいよいよクライマックスに入ってきたというところか。御園がいなくなって自分が背負っている荷物の重さを感じている帝に対する典侍の言葉もまた帝思いなんだよなあ。しかしここであえてまた突き放し、展開としては第二部突入?引き続き楽しみ。

おじょじょじょ(クール教信者

連載をやっと追いかけ始め、3巻発売を機に1巻から通し読み。1巻では春と川柳がお互いを特別な存在として認めるまで、2巻では天道さんとクリスをキーパーソンに春がクラスに受け入れられるまで、そして3巻では姉妹の和解がテーマ。ほぼ描くべきものは描いたというところで最新号でまさかの展開。まあ大団円のためには一旦別離が必要、ってことなんでしょうけど。

かくしごと(久米田康治

主人公=作者本人ではないとはいえ実体験に基づく、他の漫画家漫画とは一線を画すというか経験を踏んでないと描けないお話。藤田さんはネタになりますね(笑)/しかしカラーページ、「物語終了後」というか「主人公がいなくなった後」という雰囲気を漂わせていて、数年の間に一体何が……?ってのは描き下ろしだけで進んでいってる。こういうのは単行本を買ってもらうための仕掛けではあるんだが明らかにカラーが異なるだけに、どういう形で終了するのか今から気になる。

ねじの人々(若木民喜

初期にあった哲学の紹介というイメージから一歩進んで、哲学は人付き合いや社会生活と地続きだという観点を重視した話の進め方。SMAP記者会見パロディやねじを不要なものだとする風紀委員長というのが現代社会を映しているのが考えさせられるところ。連載は最終回を迎えたけど、ラストは作者のたどり着いた答えというか心境なのかな、というところ。

金の国 水の国(岩本ナオ

岩本ナオ版おとぎ話。荒廃する国同士の長年の対立を収束させたカップルのお話ではあるんだけど、そこに至るまでに王女やムーンライトといった協力者の存在なしには成り立たなかった和平でもあり。独特のセンスというか見せ方だなと思ったのが脇役やモブの台詞。「族長それ全部少年ですから」「男と女じゃポッチャリの定義が違う」「QPS48?みんなムーンライトPの愛人だけどな!」とか随所で笑いをとっている(笑)

LES MISERABLES(新井隆広

ついに完結。ジャヴェル、マリウス、ジャン・ヴァルジャンのそれぞれの苦悩。そしてジャン・ヴァルジャンの救い。司教との約束との象徴である銀の燭台が表紙を含め効果的に使われてましたなあ。/しかしテナルディエは最後までテナルディエだったという…… 長大な物語からこれでも一部抜粋ではあるんだろうけど、8巻で全33話って月刊誌とはいえすごい密度なんだなあと再確認。

プレイバウ! ナナっちとさんぽした、だいたい5000日。(遠藤淑子

ナナっち関連の竹書房での掲載分まとめ+描き下ろしのナナロス。「狼には気をつけて」の終盤ぐらいからおまけ漫画に登場するようになり、「犬ぐらし」、そして「今月のわんこ生活」と仕事の面でも遠藤さんを支えてきたナナっち。ロスか……「退引町」で飼い犬が死んだ女の子の話を思い出す。

超嗅覚探偵NEZ(那州雪絵

能力との付きあい方というか、受け入れて活かしてくれる人がいたから、っていうラスト。イカズチの場合はたぶんそれがなかったってことかな。しかし9年で3冊っていう話出てたけど当初はたぶん読み切りのつもりで描いたんだろうからよくここまで続けられたなとも思う。しかしお姉さんも人が悪い(笑)

ヨルとネル(施川ユウキ

序盤は逃走中という設定ながらも施川ユウキらしい掛け合い中心なんだけど、後半一気に雰囲気が変わる。(同じ作品から着想を得たらしいという意味で姉妹作の)「オンノジ」ではまだ希望を感じさせるラストだったけど、今回は客観的にはおそらく救いがない。だからこそ「死体なんかに渡さない」という部分の重みが大きいのだが、主役二人の心情としては単純に救いがないって言っていいのかなとも思う。少なくともこの絶望的な状況の中、お互いがいたから生きていられたというのはあるわけで。どう思うかは受け手に委ねてるのかなあとも。

バーナード嬢曰く。施川ユウキ

読書の楽しみ方が広がってきてるな、という感じがする。一方で神林のヒロイン化著しい。貸してた本が汚されちゃった話とか二人でお店に入ってるのに自分だけ本読んでいいんだろうかという話とかバス待ちとか。アニメはその方面クローズアップしてましたな。

かげきしょうじょ!!(斉木久美子)

助六になれなかった女の子」というのが、単なる歌舞伎の性別だけの話とも言えなかった過去。「私達には『銀橋』があるよ」ってのはさらさにとって希望というか、救いの言葉なんだろうな。さらさと奈良っち以外にも話を広げていってるものいいと思う。

どれか1作品選んでトップ賞、となるとやはり「ヨルとネル」になりそう。